「二月八日 昼ごろからサラサラと粉雪が降って来た。」
 
志賀直哉が我孫子時代に執筆した「雪の日―我孫子日誌」の冒頭です。偶然にも、2月8日(土曜日)は久々の大雪に見舞われ、翌日の雪かきに苦労する方々も多かったのではないでしょうか。
 白樺文学館前も30センチはあろうかという積雪に、9日午前は雪かきを行いました。すっかり文学館前のオブジェは雪に埋まってしまいました。

 
 おとなになってしまうと雪による交通網の混乱や事故を危惧するなど、雪の怖さにばかり気がとられてしまいますが、志賀直哉は「雪の日―我孫子日誌」の中で、雪について次のような言葉を残しています。
 
「雪には情緒がある。その平常(ふだん)忘れられている情緒が湧いて来る。これが自分を楽しませる。」
 
 雪が降ったことによる心のざわめきとでもいえましょうか、その非日常性への喜びについて見事に表現した一文と言えるのではないでしょうか。
 
 この「雪の日―我孫子日誌」は、『読売新聞』文芸欄において1920(大正9)年2月23日から26日まで4回にわたり連載された作品です。志賀直哉が我孫子の雪の風景を描いた作品は他に「雪の遠足」があります。その他我孫子時代の作品はどれも魅力的です。この機会に志賀直哉の作品に触れてみてはいかがでしょうか?
まだまだ路面の凍結などが心配されますが、足元に十分お気をつけて、白樺文学館にお越しください。
 
志賀直哉邸跡の様子(2月9日午前9時撮影)